【読書ログ】傲慢と善良-辻村深月-

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※本記事はネタバレを含みますので、ご注意ください。

一言感想

誰しもが内に秘めているであろうリアルな心情表現の解像度が高く、ドキッとする。

by T.M(Cogras運営チーム)

はじめに

作者紹介

ご存知の方も多いと思いますが、著者について紹介します。

辻村深月

1980(昭和55)年、山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業。

2004(平成16)年に『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞してデビュー。2011年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で直木賞、2018年『かがみの孤城』で本屋大賞を受賞。
ほかの作品に『ぼくのメジャースプーン』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『盲目的な恋と友情』『ハケンアニメ!』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』などがある。


『かがみの孤城』は個人的にとてもおすすめです。学生時代の私たちの心の中にあった気持ちが解像度高く表現されています。

あらすじ

物語の概要は以下です。

  • 西澤架(にしざわ かける)と坂庭真実(さかにわ まみ)の関係を中心に展開する物語です。
    婚活アプリで出会った二人は2年間交際を続けていますが、真実が突然姿を消すことから物語が始まります
  • 架は真実の行方を探るため、彼女の過去や関係を調べ始め、やがて彼女が抱えていた葛藤や秘密に触れることになります。
  • 真実は群馬県の前橋市出身で、地元での婚活に失敗し、東京で新たな生活を始めた人物です。
    彼女の失踪の背後には、自己評価が低く自己愛が強いという婚活の現実や、地方と都市の価値観の違いが影響しています​。
  • 架は、結婚相談所の所長である小野里さんとの対話を通じて、自分自身の傲慢さや真実の善良さに気づいていきます。
  • 物語の後半では、真実の視点からの描写も加わり、彼女の内面や選択が明らかになっていきます。

結婚や自己愛、地方と都市の価値観の違いをテーマにし、現代社会における婚活の現実とその中での人間関係の複雑さ描いています。

主な登場人物の紹介

主な登場人物は3人です。基本的に、主人公である架視点で物語は進んでいきます。

西澤架(にしざわ かける)

物語の主人公であり、婚約者である坂庭真実の突然の失踪をきっかけに彼女の行方を追います。

架は自分の人生を絶対に失敗させたくないと強く思っており、そのために真実との結婚を躊躇し続けます。この自己愛の強さが彼の傲慢さとして描かれています。

坂庭真実(さかにわ まみ)

架の婚約者で、物語のもう一人の主要人物です。群馬県の前橋市出身で、地元での婚活に失敗した後、東京に出て新しい生活を始めます。

真実は謙虚で善良な性格ですが、母親の期待に従いすぎた結果、自立する機会を逃してしまいます。

小野里

結婚相談所の所長で、架が真実の過去を調べる中で出会う人物です。

小野里は、婚活がうまくいかない理由として自己評価が低い一方で自己愛が強い点を指摘します。彼女のリアルな婚活観が作中で大きな役割を果たします

メッセージ

本書のメッセージは大きく2つあると私は考えます。

  1.  婚活の現実と葛藤
  2.  善良と傲慢の二面性

婚活の現実と葛藤

婚活アプリや結婚相談所を利用する中で、登場人物たちは自分自身と向き合い、内面の弱さや強さを見つめ直します。
特に、婚活がうまくいかない理由として自己評価の低さと自己愛の強さが描かれています

自己評価の低さと婚活

自己評価が低いと、婚活において様々な障害が生じます。

例えば、自己肯定感が低い人は、他人からの拒絶を非常に恐れ、過度に自分を防衛する傾向があります。
これにより、コミュニケーションがぎこちなくなり、ネガティブな発言をしてしまうことがあります。

例として、「僕なんてつまらない男なのにお会いして頂いてすいません」といった発言をしてしまうと、相手がどう返事をして良いか困惑するため、良好な関係構築が難しくなります​。

自己愛の強さとその影響

一方、自己愛が強すぎると、自己評価が現実と乖離してしまうことがあります。

これは、自分を過大評価し、他者に対して不適切な期待を持つ結果となりがちです。
このような態度は、婚活においても相手に対して不誠実な印象を与え、関係がうまくいかない原因となります。

善良と傲慢の二面性

善良さは一見するとポジティブな特質ですが、それが過剰になると周囲に対する無意識の優越感や過干渉として表れることがあります。

例えば、「自分は正しい行動をしている」と信じるあまり、他者に対して批判的になったり、過度に介入したりすることがあります。これは善良さが「自分の価値観が絶対である」という傲慢さに転じている例です。

さらに、「普通の人でいい」という一見謙虚な望みが実は「自分に見合う価値のある人」を求める傲慢さである場合もあります。

この小説は、架が傲慢・真実が善良として表現されていますが…
全ての人は善良さと傲慢さの両方を持ち合わせており、架の善良さ・真実の傲慢さが小説の後半で少しずつ明かされていきます

「傲慢と善良」は、婚活を通じて現代社会の生きづらさや人間関係の複雑さを描き出し善良さという仮面の裏にある傲慢さを暴き出します。この作品は、個人の選択や行動がいかにして他者に影響を与えるのか、そしてその過程で自分自身がどのように成長していくのかを探求します。

辻村深月は、本作を通じて「婚活がうまくいかない人は謙虚で自己評価が低い一方で、自己愛が強い」と指摘し、読者に対して現代の婚活や人間関係のあり方について深く考える機会を提供しています​。

この作品は、多くの読者に「人生で一番刺さった」と評価されており、婚活や人間関係におけるリアルな葛藤を描いたことで高い共感を得ています。

最後に

皆さんに読んでいただき、未婚の方は自分について改めて考える機会に、結婚されている方は過去の自分を振り返る機会にしてみてください!

辻村 深月

では、また!

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